2026年4月10日、東部時間20時07分、カプセル”Integrity”がサンディエゴ沖約65〜80キロの太平洋上に着水した。4名の宇宙飛行士が宇宙で過ごした時間は9日間1時間32分、飛行距離は約112万キロ、そして有人飛行の最遠記録として地球から40万6,914キロを達成した。1972年以来初となる地球低軌道外への有人飛行が、こうして幕を閉じた。NASA長官ジャレッド・アイザックマンは着水を”完璧な命中”と表現した。

注意:これは月面着陸ではありません

Artemis IIは月周回ミッションです。クルーは月を周回して帰還します。人類が実際に月面に降り立つのはArtemis IV、2028年初頭の予定です。Artemis IIはそこへ至るための重要な一歩ですが、月面着陸そのものではありません。

打ち上げ
4月1日
18:35 EDT、ケネディ宇宙センター
月最接近
4月6日
月面から6,543km
最遠距離記録
4月7日
地球から252,760マイル
着水
4月10日
EDT 20:07、太平洋、サンディエゴ沖約65キロ ✓

宇宙から撮影した月と地球の写真 — Artemis IIミッション

Orion宇宙船が月へ向かう途中の宇宙空間

Artemis IIの宇宙船”Orion”が深宇宙を飛行中。クルーは船名を”Integrity(誠実)”と命名した。NASA / AP

4月2日、Orionから撮影した地球

4月2日。”Orion”から見た地球。月へ向けて加速する直前、軌道投入後まもない時点の映像。NASA / AP

2026年4月2日、Orionのポートホールから撮影した地球

4月2日。月への遷移軌道に乗った直後、ワイズマン宇宙飛行士がポートホール越しに撮影した地球。NASA / AP

宇宙飛行士クリスティーナ・コッホが地球を見つめている

クルーがすでに月へと向かう中、コッホ宇宙飛行士が”Orion”のポートホール越しに地球を見つめている。NASA / AP

2026年4月3日、Orionのポートホールから見た地球

4月3日。飛行3日目、”Orion”のポートホールに映る地球。船はすでにはるか遠くまで来ていた。NASA / AP

Artemis IIクルー

4月4日。Artemis IIのクルー——ワイズマン、ハンセン、コッホ、グローバー——が月へ向かう”Orion”船内でインタビューの準備をしている

4月6日、最接近まで数時間

4月6日。”Orion”のポートホールに映る月。最接近まで数時間を切っていた。NASA / AP

月の近接撮影

4月6日。月の近接映像——右が地球から見える表側、左が裏側。その境界に位置するのが直径約1,000kmのオリエンタレ盆地。NASA / AP

月の陰から太陽が現れる

4月6日。月の陰から太陽が姿を現す——日食の終わり。約1時間の完全な暗闇が明けた瞬間。NASA

4月6日、地球が月面の地平線に沈む

4月6日18:41(EDT)。月周回中、”Orion”のポートホールから見た”地球没”。手前に映るのは中央丘が特徴的なオーム・クレーター。NASA / AP

月面の昼と夜の境界線

4月6日。月面のターミネーター(昼夜境界線)。斜めに差し込む太陽光が地形を浮かび上がらせ、ジュール、バーコフ、スティビンス各クレーターと周辺の高地が見える。NASA / AP

月が太陽を完全に覆った皆既日食

4月6日。月が太陽を完全に遮った——54分間の皆既日食。周囲を取り囲む光の輪は太陽コロナ、太陽の外層大気だ。地球上からは絶対に見られない光景。NASA / AP

オリエンターレ盆地の南西部

オリエンターレ盆地の南西部。画面中央に見えるのは環状の山脈——かつて巨大な隕石が衝突した際に形成された、弧を描く地形です。この山脈は周囲の地表より高くそびえ、盆地の外縁を画しています。月面に残る多重環状衝突構造のなかでも、特に保存状態の良いもののひとつです。Apollo時代の宇宙飛行士たちは、その特徴的な曲線的な形状から、この地形に非公式のニックネーム”キス”をつけました。

月面の風景

4月6日。Artemis IIのクルーが観測セッション中に解説した複数の月面地形が一枚に収まっています。オーム・クレーター、嵐の大洋、グリマルディ・クレーター、ピエラッツォ・クレーター、命名が提案されたばかりのキャロル・クレーター、そして広大なヘルツシュプルング盆地。暗い火山性平原から密にクレーターが刻まれた高地、古代の衝突盆地の痕跡まで、月面地形の幅広いスペクトルを一望できます。

4月6日 — 月の主要地形を複数捉えた一枚

4月6日。特徴的な月面地形が複数写っています。アリスタルコス・クレーターは際立った明るさで目を引き、その高い反射率が周囲の地形と鮮明なコントラストをなしています。隣にはマリウス丘陵地帯——火山性ドームや火砕丘が連なり、古代の月面火山活動の痕跡が残るエリアです。ライナー・ガンマ渦状体は暗い玄武岩質平原の上に明るい模様を描いています。グルシュコ・クレーターの光条が地表に幾筋もの帯を伸ばし、画面下部には特徴的な暗い底を持つグリマルディ・クレーターが見えます。

キャロル・クレーター

4月6日。画像中央の明るい点が、Artemis IIのクルーが”キャロル”と命名するよう提案したクレーターです。コマンダーのリード・ワイズマンの亡き妻の名に由来しています。直径は約5.6km。月の表側、西端近くに位置しており、十分な口径の望遠鏡があれば地球からも確認できます。

月面の暗部と明部が織りなすコントラスト

4月6日。Artemis IIのクルーはこの写真を”手のひらの跡”に例えました。月面の暗部と明部が交互に連なる様子が写っています。上から順に暗い領域は、嵐の大洋、湿りの海、そしてビルギウス・クレーターです。

左から太陽が昇ってくる様子

4月6日。左から太陽が姿を現し、約1時間にわたる皆既日食が終わろうとしています。太陽が月に隠れていた間、手前に見えるOrion船内のクルーは、闇に沈んだ月を観測していました。通常の条件ではほぼ見ることのできない光景です。その瞬間は期待を裏切りませんでした。東部時間21:00、宇宙飛行士たちは地球と交信し、隕石衝突による閃光を6回確認したと報告しました。隕石が時速数万キロで月面に衝突した際に生じる光のパルスです。

直径約1000kmの衝突盆地、オリエンタレ盆地

画面中央に位置するのがオリエンタレ盆地で、中心部には数十億年前の噴火で月の地殻を突き破った固まった古代溶岩の暗い斑点が見えます。直径約1000kmのこの衝突クレーターは月の表側と裏側の境界付近に位置しており、条件次第では地球からも一部を確認できます。左側に見える小さな明るいクレーターはビルギウスで、そこから約400kmにわたって光条が四方に伸びています。

地球が月の地平線に近づいていく様子

4月6日。地球が月の地平線に近づいていく瞬間——Artemis IIのクルーが月に隠れる約6分前に撮影しました。地球は三日月状の位相で、太陽光は右側から差しています。ディスクの暗い部分は夜側です。照らされた側には、オーストラリアとオセアニア上空に渦巻く雲のシステムが、青みがかった静かな大気の色の上に広がっています。クレーターだらけの月面に連なる小さなくぼみの列は、大規模な一次衝突で飛び散った破片が作った二次クレーター連鎖です。

手前に月の裏側、その奥に地球

手前に月の裏側、その奥に地球

月の裏側から見た地球

月の裏側から見た地球

月周回軌道から見た地球の三日月

月周回軌道から見た地球の三日月

4月7日。Artemis II クルーが撮影した天の川

時間が止まるような一枚。Artemis II のクルーが私たちの銀河——天の川——を撮影した。その渦巻き構造を形成しているのは、中心の棒状星団から伸びる2本の腕だけ。銀河の直径は10万光年以上。地球はそのうちの一本の腕の上、中心からほぼ中間の位置にある。

地球へ帰還する前の記念写真

4月7日。地球へ向かう帰路、オリオン宇宙船の船内で抱き合う Artemis II のクルー。左から時計回りに:ミッションスペシャリストの Christina Koch、ミッションスペシャリストの Jeremy Hansen、司令官の Reid Wiseman、パイロットの Victor Glover。4月6日に月の裏側を周回した後、クルーは地球へ針路を取り、4月10日に太平洋へ着水した。

カリフォルニア州サンディエゴ沖での着水

カリフォルニア州サンディエゴ沖での着水

水面に触れた瞬間

2026年4月10日、クルーが地球へ帰還。水面に触れた瞬間。

NASA 宇宙飛行士 Victor Glover と Christina Koch

NASA 宇宙飛行士 Victor Glover と Christina Koch

Jeremy Hansen と Reid Wiseman

Jeremy Hansen(左、マスコット人形を持つ)と Reid Wiseman(右、司令官)

打ち上げ:その瞬間

2026年4月1日、全高98メートルのSLSロケットがケネディ宇宙センター39B発射台を離れた。YouTubeでのライブ配信には1,700万人が同時接続した——サッカーW杯決勝の視聴者数に匹敵する数字だ。フロリダのビーチ沿いには数千人が集まり、大西洋上空を飛ぶ飛客機の乗客がポートホール越しに打ち上げを撮影する動画も拡散された。

ここまで来るのに時間がかかった。当初の打ち上げは2月5日の予定だったが、冬の嵐、初回燃料注入時の液体水素漏れ、そしてヘリウム系統の不具合と、3度延期された。4月1日の3回目の試みでようやく成功した。

Artemis II打ち上げ完全記録——離陸から軌道投入まで15分

Artemis IIの打ち上げ映像はInstagramでも多数シェアされた。フロリダ上空を飛ぶ飛行機のポートホールから捉えた映像もその一つだ。

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月への再挑戦、その経緯

人類が最後に月面に立ったのは1972年12月——Apollo 17ミッションだ。以降50年、国際宇宙ステーション、火星探査機、宇宙望遠鏡と歩みを進めてきたが、月だけは遠ざかっていた。

流れが変わったのは2017年。トランプ大統領が宇宙政策指令に署名し、NASAの月探査プログラムが正式に復活した。2019年にはプログラム名がArtemis(アルテミス)と命名された——ギリシャ神話の月の女神であり、アポロンの双子の妹でもある名前だ。Apollo計画の次の一手として、実に象徴的な命名といえる。

ただし、復帰の背景にあるのはロマンだけではない。中国が2030年までの有人月面着陸と、ロシアとの共同による月基地建設計画を発表したことへの対応だ。米国はArtemisプログラムとArtemis Accords(月探査の原則に関する国際協定、現在61カ国が署名)で応じた。NASA長官のジャレッド・アイザックマンは率直にこう語った:“大国間の宇宙競争において、時計は刻々と刻んでいる”

NASAが月に戻ろうとしているのではない。別の旗を掲げた中国が追ってくるから、急いでいるのだ。

中国の月探査計画と世界の宇宙開発への影響については、RAND Corporationの分析が詳しい。

2022年11月、無人のArtemis Iが月周回飛行を成功させ、機体の動作確認を終えた。Artemis IIは初の有人飛行だ。実際に人が乗った状態で深宇宙における生命維持システムと航法がどう機能するか——そのデータを得ることが今回の核心にある。

Artemis IIのクルー

4人の宇宙飛行士——アメリカ人3名とカナダ人1名。全員がベテランだが、これほど月の近くまで来たのは誰にとっても初めてのことだ。

リード・ワイズマン(船長)——米海軍のテストパイロット出身で、国際宇宙ステーション(ISS)の元船長。Apollo以来の月探査クルー最年長メンバーでもある。2016年にはX(旧Twitter)で”月軌道を飛ぶ夢を見た。夢だったと気づいて落ち込んで目が覚めた”と投稿していた。10年後、本物になった。

ビクター・グローバー(パイロット)——米海軍大佐。2020年にSpaceX Crew-1ミッションでISSに滞在した経験を持つ。最遠距離記録を更新した瞬間、クルーを代表してメッセージを読み上げたのも彼だ。低地球軌道外を飛行した初のアフリカ系アメリカ人となった。

クリスティーナ・コッホ(ミッションスペシャリスト)——電気工学の専門家で、女性として最長のISSへの連続滞在記録(328日)の保持者。低地球軌道外を飛行した史上初の女性だ。”月面に立つ最初の女性にはなれないけれど、どう思うか”と問われ、静かにこう答えた:”それでいい。これが宇宙での運命というもの”。

ジェレミー・ハンセン(ミッションスペシャリスト)——カナダ空軍大佐で、カナダ宇宙庁(CSA)の宇宙飛行士。月へ飛んだ初の非アメリカ人となった。参加の背景には米加の協定がある——カナダが将来の月面基地向けにロボットアーム技術を提供する代わりに、アメリカはカナダ人をクルーに加える約束をした。

ひとつのミッションで生まれた3つの歴史的初記録

ビクター・グローバーは低地球軌道外を飛行した初のアフリカ系アメリカ人。クリスティーナ・コッホは同初の女性。ジェレミー・ハンセンは初の米国外出身者。この3つの記録がひとつのミッションで同時に達成された。

月のそばで何が起きたか

4月6日、”Integrity”は月面から6,543kmの距離を通過した。”Integrity”が月の裏側を回る40分間、地球との通信は完全に途絶えた。その間、クルーは日食を目撃した。太陽が月に隠れ、地球上では数年に一度の皆既日食のときにしか見えないコロナ(太陽の外層大気)が視界に広がった。

4月6日の日食

4月6日。月が太陽を完全に覆い、クルーは宇宙空間から直接日食を観測した。月の周囲を取り巻く光の輪がコロナ——太陽の外層大気で、地球からは皆既日食の数分間しか見られない。日食は54分間続いた。地上では決して見られない光景だ。写真提供:NASA、Artemis IIクルー

4月7日13:56(EDT)、”Integrity”はApollo 13クルーが56年間保持してきた記録——地球から248,655マイル——を塗り替えた。新記録は252,760マイル、約6,600km上回った。グローバーはクルーを代表してこう読み上げた:”先人たちの偉業を讃えるとともに、現在と未来の世代に挑む——このレコードが長続きしないことを願って”。

その後、クルーは予期せぬことをした。ポートホール越しに月面を観察していたところ、名前のついていない2つのクレーターを見つけた。クルーは命名を提案した。一つ目は船の名前にちなんだ“Integrity”。二つ目は“Carroll”。グローバーはゆっくりと、間を置きながらその名を読み上げた——船長ワイズマンの妻キャロルは、このミッションの訓練が始まった2020年に癌で他界していた。クレーターは月の表側と裏側の境界に位置し、特定の時期には地球からも見えるという。

“Orion”から撮影した月のクレーターと地球の出

Sky Newsによる3時間のライブ配信は、記録更新の瞬間とその後の月周回の一部始終を収めている——ミッションコントロールへの船内からの電話、クルーによる月面観察、そして”Carroll”クレーター命名の告知まで。宇宙中継がまるで人間ドラマのように見える、めったにない映像だ。

Artemis IIの月通過——Sky News完全中継、3時間

地球への帰還:4月10日

ミッション最後の13分間が、最も緊迫した時間だった。EDT19時53分、カプセルは時速約4万キロ——音速の35倍——で大気圏に突入。ヒートシールド表面の温度は2,200〜2,800°Cに達した。6分間、カプセルはプラズマに覆われ、地上との通信が完全に途絶えた。信号が回復したとき、管制センターが最初に聞いたコマンダー・ワイズマンの声はこうだった。”Houston, Integrity, we have you loud and clear”。その後、11基のパラシュートが開き、EDT20時07分27秒、”Integrity”が海面に触れた。

USSジョン・P・マーサに乗艦する宇宙飛行士たちは、膨張式ラフトを経由してヘリコプターで2名ずつ順番に引き上げられた。クリスティナ・コッホが最初にカプセルを出て、リード・ワイズマンが最後となった。4名全員が自分の足で甲板を歩き、車いすを断った——10日間の無重力飛行の後でも、だ。甲板に立ったワイズマン・コマンダーはこう語った。”ジェレミーがキャロルの名前を口にした瞬間、私たちは全員崩れ落ちそうになった。あの瞬間が、私にとってミッション全体のクライマックスだった”。

ミッションの数字まとめ

総飛行距離111万8,007キロ ── 最遠記録40万6,914キロ ── 宇宙滞在9日間1時間32分 ── 着水精度1マイル以内 ── 宇宙飛行士4名、全員健康。

トランプ大統領は着水直後に祝福のメッセージを発表し、クルーをホワイトハウスに招待した——具体的な訪問日はまだ発表されていない。さかのぼること4月6日、大統領はホワイトハウスからクルーと12分間のライブ通信を行っていた。大統領が月周回中の宇宙飛行士と直接会話したのは、50年以上ぶりのことだ。

ミッション後に残る最大の課題は、ヒートシールドの状態だ。2022年のアルテミスIでは、帰還したヒートシールドに100カ所以上の損傷が見つかった。アルテミスIIに向けてNASAは大気圏突入の軌道とシールド素材を変更している。着水直後にダイバーがシールドを撮影しており、その分析結果が次のミッションまでに変更が必要かどうかを左右する。NASAの幹部は”月面への道は、これで開かれた”と述べている。

この先どうなるか

Artemis IIは検証のためのミッションだ。実際に人が乗った状態で深宇宙における生命維持システムが機能するか確かめる。時速25,000マイルで大気圏に再突入するOrionが月からの飛行に耐えられるか確かめる。このミッションなしに月面着陸は計画できない。

1
Artemis III — 2027年中頃
軌道上テスト

4人の宇宙飛行士が低地球軌道に入り、SpaceXとBlue Originの月着陸船とドッキングする。月面には行かず、ドッキング手順とAxiom Space製の月面スペースシャツの検証のみ実施。

2
Artemis IV — 2028年初頭
56年ぶりの月面着陸

4人のうち2人が月の南極に降り立つ。約1週間滞在し、4〜5回の船外活動を実施する予定。目標は、水の氷が存在する可能性のある永久影クレーターへの到達だ。

3
Artemis V以降 — 2028年末〜
常設拠点の構築へ

月面基地の建設開始。NASAは2035年頃のArtemis Xまで毎年着陸を計画している。並行して、Blue Origin、Astrobotic、Intuitive Machinesによるロボット探査ミッションも続く。

中国はどう動いているか

北京は2030年までに独自の有人月面着陸を計画している。2026年8月には嫦娥7号(Chang’e 7)が打ち上げられる予定で、永久影クレーターの水氷探索を行う”ホッピング探査機”を搭載している。Artemis IVと同じ目標だ。宇宙競争は止まることなく、並行して進んでいる。

よくある質問

最初の着陸はArtemis IVとして2028年初頭に予定されている。2人の宇宙飛行士が月の南極付近で約1週間を過ごす計画だ。予定通り進めば、1972年12月以来初めて人類が月面に立つことになる。

Artemis IIは、実際に人を乗せた状態でOrionとSLSの生命維持システム、航法、通信、月からの帰還時の大気圏再突入を検証するミッションだ。この検証なしに着陸は計画できない。フライトシミュレーターを何時間も経験しないまま初フライトに臨めないのと同じことだ。

最大の原因はSpaceXによるStarshipの軌道上給油技術の遅れだ。着陸船が月まで飛ぶには、軌道上で約1,500トンの燃料を補給する必要がある。この技術はまだ確立されていない。2026年4月時点で、Starshipのテスト飛行11回はすべてサブオービタルにとどまっていた。

公式にはそうだ。月は火星飛行に必要な技術を実証するための試験場と位置づけられている。NASAは核推進宇宙船SR-1 Freedomを開発中で、2028年12月の火星飛行を想定している。ただし、そのスケジュールがどこまで現実的かは、まだ誰にも分からない。

ミッションの技術構成——概要

月への飛行に不可欠な3つの主要要素を整理する。

要素 概要 主なスペック
SLSロケット スペースシャトル技術をベースにした超大型ロケット 全高98m、推力880万ポンド、打ち上げコスト約40億ドル
Orion宇宙船 4人乗りカプセル、Airbus製の欧州サービスモジュールを搭載 居住容積8.95㎥(Apollo比50%増)、最大21日間の自律飛行が可能
Starship HLS 月面降下用のSpaceX製着陸船(Artemis IV以降で使用) 全高約50m、月飛行前に軌道上で約1,500トンの燃料補給が必要
💡 豆知識

SLSに搭載されているRS-25エンジンは、スペースシャトルで実際に使用されたエンジンそのものだ。2011年のシャトル計画終了後、オービターから取り外し、改良を加えてSLSに転用した。各エンジンはシャトル時代に平均3〜4回の飛行経験を持つ。